薬剤師集団に向けて、道東の民医連医療の創設者「時沢名誉理事長」にお話をいただきました。

みなさんこんにちは。
2016年8月2日に、道東勤医協の創設者で、道東での民医連医療の先駆者でもある、時沢享名誉理事長をお招きして道東ブロック薬剤師集団と懇談を行いました。

時沢先生は北海道日高町ご出身で、1976年にここ釧路・根室地方に「医療に恵まれない人に医療を」を掲げ、民主的な医療機関を設立しました。今回の懇談では、道東に医療機関ができた経緯や、くしろ医院設立後の道東の医療状況や診療での失敗談を語っていただき、医師の立場で薬剤師に求めることを教えて頂きました。

当時の釧路・根室地方の生活は貧しく、医療機関にかかることができない人が溢れていたそうです。医療の質についても、医師のいうことに患者は口出ししない、薬もどんな作用の薬かの説明があまりない時代だったそうです。そんな中、時沢先生がここで目指した医療は患者側からもどんな医療を受けているかを理解しあえる“開かれた医療の提供”、“地域の人と目線を平らにした医療”、施設に留まって待っているのではなく“地域に出かける医療”、自分の健康を自分で守るため、“住民とともに創る医療”の4つを軸にしたものでした。そして、医療者と地域住民の対等な立場を構築するため、対等にものを言ってくれる組織も結成されました。(これが今の友の会連合会)

くしろ医院での診療で印象に残ったことをお話しされ、血圧200台で病院受診が必要な方がサケ・マス漁に出なければならないとのことで、時沢先生の制止を振り切り船に乗って行った事や酪農を営んでいる方が急性肝炎で入院加療が必要とお話した際、仕事があるので入院できないと拒否された事、釧路・根室地域では入院=失職に繋がる、地域の実態に合わせた医療を行うため、沢山の葛藤があったとお話されました。

患者・住民の求めに応じる医療を行うため、根室で2週間に11回の医療懇談会を開いた事もあり、道東地域に半日ドックを実施する取り組みや二股聴診器というアイデアから、患者の血圧を看護師と一緒に聴き、自己血圧測定の仕方を教えて、患者自身に行ってもらう取り組みもして、創意工夫の毎日であった事がお話から伝わりました。

昔話で盛りあがっている中、時沢先生が医師として薬剤師に求めたい事をお話され、それは薬の用い方でした。
薬剤師は薬剤の専門家としての薬の使い方や用法・用量の確認、副作用の確認などを医師と共に行って欲しいと訴えました。また、今の投薬は電子カルテで行うので、医師がマウスをクリックしたら、それが処方箋としてどのように出ているかわからない事もあり大変不安だということと、その際保険薬局でチェックがかかる事は非常に重要だとお話されていました。
今後は、多剤投与の改善や地域包括ケアシステムの中でも薬剤師として力を発揮してほしいと激励の言葉をいただきました。

%e6%87%87%e8%ab%87今回の時沢先生との懇談により、薬剤師として勤医協に通ってくれる患者や地域にどのように向き合い、薬の正しい知識や使い方を伝えられるかが課題にあると思いました。そして、医師と薬剤師が一緒になって、患者の薬物治療に協力し合い、民主的な医療に貢献していく事が今後も大事なのだと教えていただけました。
時沢先生が道東に残してくれた「民主的な医療」をどのように発展させ、患者や地域住民の希望に応えられる医療を提供するかが、私達道東勤医協に勤める医療者の役割であると感じました。

薬局薬剤師   畠山貴士