家庭医療コースの魅力・特徴

釧路協立病院では「広大で多彩な土地柄」「地域住民との心理的距離の近さ」という背景を活かし、「濃厚な実践経験」に「家庭医療の学習環境」を加えることで、『地域で活躍できる家庭医』を堅実に育成しています。

3年間のプログラムの中で、北海道各地の特色ある地域を渡り歩きながら、総合内科病棟・在宅診療・診療所・小児科・選択研修を経験していただき、家庭医療学会認定「家庭医療専門医」および、日本内科学会認定「認定内科医」の受験資格を取得できます。

釧路協立病院家庭医療研修プログラムの3つの特徴

① 釧路という「土地柄の魅力」

1.釧路・道東地域の医療情勢
2.広大な北海道らしい地理的条件
3.住民との一体感

②「臨床医としての実践」を重視

1.病院総合医として
2.診療所家庭医として

③ 成人教育理論や多職種共同学習を活用した「濃厚な学習環境」

1.目標設定と振り返り
2.指導医からの充実の指導
3.多職種による教育と評価
4.外部からの客観的評価(専門医試験受験)

魅力1 釧路という「土地柄」

①-1.釧路・道東地域の医療情勢

34万人の住民(東京23区は1300万人)に対して500人の医師(同3万人)で医療を行っており、今も現在進行形で基幹病院からの医師の撤退が続いています。

一人の医師が責任をもつ住民数=釧路680人:東京都心部4.9人⇒約140倍!

少ない医師でどうやってこの状況でも良質の医療を提供できるのか?
ぜひご自身でも考えてみてください。

①-2.広大な北海道らしい地理的条件

道東には、地域住民の健康を制限しかねない、いくつかの制約があります。

1.診療圏(患者宅から病院までの距離)半径100km(!!)という「物理的距離」
2.僻地ゆえの経済的困難・社会的孤立など
「社会的脆弱性(Social vulnerability)」
3.季節や天候によって、仕事量や生活の余裕が大きく左右され、
受診の余裕も影響される「一次産業従事者」の抱える困難

日常の診療でも、「病院にかかりたいけどかかれない人がたくさんいる現実」を意識させられます。

この『医療へのアクセスの問題』を改善するにはどうすればいいでしょうか?

①-3.住民との一体感

われわれ勤医協には「友の会」という地域住民組織の存在があります。
「自分たちがこの病院を作り支えてきた」という思い、「自分たちが地域の健康を守る主役だ」という自負、「医者の育成に協力したい」という熱意。

友の会と協同し、そのポテンシャルを地域医療に活かすためにはどうすればいいのでしょうか?

この3つの問いに対する答えは・・・?
キーワードは
「多職種連携(Inter-professional work)」と「住民参加型プライマリケア(Community-oriented primary care)」

その実践方法と理論的背景を3年間かけて習得します。
興味のある方はぜひいらしてください。

魅力2 診療所家庭医としての実践

②-1.病院総合医としての実践

「包括的・継続的な内科診療を提供」

臓器別専門に分かれていない総合内科急性期病棟を中心に、亜急性期病棟、療養病棟全てで主治医として患者を担当します。

疾患の全体像をとらえることや、一人の人間の「病の体験」に寄り添うことがより深い疾患・患者理解が得られます。

「管理・運営スキルを磨く」

複数の病棟を担当し、病棟運営会議にも主体的に関わっていただきます。
また、院内横断的な「ACLSチーム」、「褥創回診チーム」、「ICT(感染管理チーム)」、「NST(栄養サポートチーム)」ではリーダー役を担っていただきます。

こういった経験を通して病院全体の「診療の質改善」や「学習する組織作り」といった、病院総合医(ホスピタリスト)に必須とされる素養が養われます。

②-2.診療所家庭医としての実践

「外来での症例経験を軸にした学び」

一般内科外来と訪問診療で、あらゆる症状に対応する幅広い継続診療に従事していただきます。
また、コメディカルとの症例カンファレンス・家庭医療学習会を通して学びを深めます。

この経験を通じて、教科書ではなく「生の患者」から学ぶ姿勢、学びを多職種で分かち合う習慣を身につきます。さらには、将来診療所のスタッフ教育にかかわる際のポイントも習得できます。

「地域住民とのかかわり」

友の会会員との話し合いや彼らが主催する健康活動への参加を通して、「地域住民が主役」の健康増進プロジェクトを「健康の専門家としてサポート」する経験を積んでいただきます。

この経験を通じて、地域住民との対等で密接な連携の仕方や、病気の治療だけでなく「健康を増進する」ことの重要性を理解していただきます。

魅力3

③-1.目標設定と振り返り

当院の後期研修では、「現場での経験を質の高い学びにつなげる」目的で、成人教育理論にのっとった系統的な教育システムを採用しています。

まず研修開始時に明確な研修目標を設定し、常に目標とのずれや目標の達成度を意識しながら研修を積んでいただくことで、効率のよい研修スタイルを習得していただきます。

そして適切な自己評価能力を身につけるため、指導医によるFeedback(第3者の視点からの評価)& Reflection(成長状況の自己省察)を隔週土曜日の「釧路レジデントデイ」で行っています。

これらの制度を通して、自ら現状に即した学習目標を立て、到達状況を自己評価しながら、「僻地診療所でも自ら学び続け成長し続けられる家庭医(Reflective practitioner)」を育てます。

③-2.指導医からの充実の指導

「家庭医療学レクチャー」、「内科カンファレンス」等を通しての学習の場はもちろんありますが、それだけではありません。

地域に行けばいくほど指導環境が悪化するという先入観を覆すごとく、経験豊富なベテラン医師と家庭医療学を学んだ若手家庭医のコラボレーション、札幌・旭川・函館の各家庭医療研修プログラムの指導医たちとの定期的な学習会や人材交流、IT環境の整備を通して、「僻地でも質の高い指導医から学べる環境」を用意しています。

③-3.多職種による教育と評価

毎週開催される各病棟の多職種カンファレンス等を通して、ともに学び合う習慣が自然に身に付くよう配慮されています。
また、3か月ごとに開催される研修委員会では普段の診療の様子を見ている看護師・薬剤師・検査技師・放射線技師・事務などから詳細なフィードバックをもらうことで、多彩なコメディカルの視点から見た「頼りがいのある一人前の医師」らしさや、「一緒に働きやすい医師」らしさもチェックできます。

③-4.専門医試験の受験

一定の質を担保された家庭医になったことを確認するため、学会認定専門医試験を受験していただきます。
これまでに述べてきた学習機会だけでなく、家庭医としての成長や専門医試験受験に必須の「ポートフォリオ作成」に関しても丁寧な指導を行います。
計画的なポートフォリオ作成スケジュールを策定し、作成過程では専属指導担当医による綿密な指導を受けられ、定期的な発表の機会によって作成のモチベーションも高まるため、無理なく質の高いポートフォリオを作成できるような環境となっています。

最後に

以上のように、当院の家庭医療後期研修プログラムでは、「現場での患者診療を通した経験」・「カンファレンスでの多職種コミュニケーション」・「適切な指導のもとでの自己学習」の3つがバランスよく織り込まれています。

「地域=研修よりも労働が主体」という固定観念を覆すだけのシステムを自信を持って用意しています。興味をもたれた方は、ぜひ見学にいらしてください。お待ちしています。