熱い心と冷たい頭で

医療危機の最先端、根室の地域医療を〝熱い心と冷たい頭〟で支えています。

医師不足で存続が危ぶまれた市立根室病院を守るため、行政、医師団、地域住民が手をとりあった「オール根室」のとりくみで大きな役割を果たしました。
 
「私の民医連人生にとっても大きな経験でしたね」そのはずです。人口3万人余の地域で2万人もの署名が集まり、道の支援などで市立病院の医療機能は維持されました。
「医師数は充足している」という政府見解のまやかしを暴き、24年ぶりに医学部定員増をかちとる力にもなりました。
根室は国境の街。霧にかすむ自衛隊のレーダードームが異様な存在感を示し、街にはロシア語の看板がそこかしこにみられます。
「ある意味で根室は恵まれているんですよ」恵まれていますか?「根室には北方領土があるでしょ。市立病院は『北方四島』の医療支援の拠点にもなっています。夕張や江別などとは、国や道の対応は明らかに違いました」
 
それだけでありません。「昔から教職員運動が強かったので、知恵と力を持った人材が豊富です」
 
もっとあります。「根室は何度も医療危機を乗り越え、住民は鍛えられています。市労連や人口の15%、4千500人もの友の会員の存在も強みです」
市立病院問題が表面化したとき、田辺医師が代表を務める根室市社保協はこの強みを最大限に生かして運動を方向づけました。
「市民の一部に市の責任を追及しようとする動きもありました。しかし、それでは医療崩壊の元凶に迫る大きな運動は出来ません」
 
社保協は国と道に責任を果たさせるため、①市立病院の崩壊は2次医療圏の中核病院の崩壊、②「北方領土」返還運動の拠点消失の危機、の2点を提起し、「オール根室」で取り組める仕掛けを作りました。広範な団体で組織した「地域医療を守る会」の署名運動には漁協婦人部や市立病院、消防署職員も加わり、根室市もこの2点を根拠に「根室は特別」の立場で国、道に働きかけました。
「ただ、特定健診で市は厚労省の言いなりです。ちゃんと目を光らせなければ」
 
市立病院を守る運動を通して、ねむろ医院の存在感は格段に高まりました。市立病院の日曜日直を医師団有志が担い、市内の医師相互の信頼関係もかつてなく強まっています。運動だけでなく、しっかりと医療も介護も担うねむろ医院に市民は信頼を寄せ、患者・利用者は着実に増えて、開設以来の累積赤字は急速に改善しています。
「職員はみんな、信頼に応えようと頑張っています。頼もしいですよ」
 
根室への展開を強く主張し、法人内の医師の合意で作りあげたねむろ医院。誇りもあり、愛着もあり、責任も感じています。「頑張るモデルは、Drコトーだけではありません。根室では私も若手。困難な地域で合意を作りながら医療を守るのは、シニア世代の役割だと思っています」
 
単身赴任して延べ5年。患者さんの要望で協立病院での診療も継続し、その日は協立病院の医師がねむろ医院を支えています。
 
釧路から130㎞を通って地域医療を守る道東勤医協医師集団の「民医連魂」は、若い研修医たちを道東に惹きつけてやみません。
2008年8月号の北海道民医連新聞記事の転載です。

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